安全への取り組み:①自動運転関連の法律・ガイドライン

はじめまして、ティアフォー Safety Engineerの須永です。

これから数回にわたって、ティアフォーの安全への取り組みを紹介していきたいと思います。

 

はじめに

今年4月1日、道路運送車両法の保安基準が改定され、自動運転レベル3(※)以上の車両に搭載された「自動運行装置」も国が定める保安基準の対象に規定されました。つまり、レベル3の自動運転車の公道走行がいよいよ法的に可能となります。

当たり前のことですが、安全を確保するにはまずはルールに従うことが重要です。もちろん、ルールを守っただけで安全が十分に確保されるわけではありませんが、守らないことには何も始まりません。そこで今回、自動運転関連で遵守すべきルールについて社内の勉強会資料を整理してみました。

(※)高速道路など、一定の条件下で自動運転が可能なレベル

 

1. 様々なルール

まず、一般的なルールを整理します。

守らないと罰則のあるもの、罰則はないけれど守るべきもの、業界で決められたルールなど、その種類は様々です。国内外の情勢も含め、簡単に説明していきます。

 

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2. 自動運転関係の法規

自動運転車として車両が道路を走るため、①道路交通に関する国内法規に準拠する必要があります。また、道路上で事故を起こした場合には、②交通事故の法的責任に関する法規によって責任を負うことになります。

 

①道路交通に関する国内法規

主に関連する法規は、道路交通法、道路運送車両法、道路法、道路運送法の4つです。  

 

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  • 道路交通法:主に、車両の運転者や歩行者が道路上において守るべきルールを定めています。自動運転では、自動運行装置が運転者としての行為を一部代替するため、関係してくる法規です。
  • 道路運送車両法:主に、車両の所有権、安全性・公害防止・環境の保全、車両の整備についての技術的なルールを定めています。車両に関する技術的な基準が記載されており、自動運転の実証実験に使用する車両も、公道を走る場合にはこれをクリアしないと違法になります。
  • 道路法:そのままですが、主に道路に関するルールを定めています。自動運転技術は、車両そのものだけでなく道路などのインフラに依拠する部分もあるため、道路の構造に関連するルールが定められている道路法も参照すべき法規となります。
  • 道路運送法:旅客自動車運送や有料道等の自動車道路事業についてルールが定められています。自動運転車としてサービスをする場合に関連してくる法規です。

 

これらの法規の内容に関しては、国際協調及び相互認証を目的とし、国連内の自動車基準調和世界フォーラム(通称「WP29」)と連携が取られています。また、WP29傘下の分科会における技術的・専門的な検討では、日本は様々な分野で主体的な役割を果たしています。このあたりの詳細については、また別の機会にご紹介できればと思います。

 

②交通事故の法的責任に関する法規 

自動車事故を起こした場合には、運転者は刑事・民事・行政上の法的責任を負うことになります。自動運行装置が運転者を代替する場合、代替している間は同様の法的責任が認められるため、これらの法規に関しても無視することはできません。

 

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レベル3以上の自動運行装置を搭載する場合は、責任範囲の明確化のため、作動状態記録装置を設置することが義務付けられました。そのため、メーカーには製造物責任法に基づく責任、販売店には契約不履行責任が生じる可能性もありますが、このあたりは国際的にもまだ議論中のようです。国際動向としては、日本が批准しているジュネーブ道路交通条約やヨーロッパ諸国が加盟しているウィーン道路交通条約がありますが、この改正に関しても国連内の道路交通安全作業部会でまさに議論が進められています。

  

3. 自動運転関係のガイドライン

2015年11月、2020年までの自動走行の実用化に向けた制度整備等に関して安倍首相が発言したことにより、国内では法令整備の準備が本格的に始まりました。また、2018年4月には「自動運転に係る制度整備大綱」が発行され、現在これに沿って制度の整備が進められています。

自動運転システム搭載車は、ある日突然公道を走り始めるわけではありません。実証実験を通して徐々に社会受容性や技術レベルを上げていくことで、自動走行の実用化を進めています。そのように実証実験が日本各地で行われる中、これまでは安全を確保するためのルールが法令しかありませんでした。そのため、法令に当てはまらない事象については、どう対処すべきか正解を模索しながら実験を行う必要がありました。そこで、各省庁はいきなり法規化するのではなく、まずはガイドラインとして大枠のルールをいくつか定めました。

 

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実証実験を行う場合、当然ですが公道の使用許可が必要になります。その際、ガイドラインに沿って許可を取得することになりますが、ガイドラインは法令ではないので、必ずしも全てのルールを遵守する必要はありません。そのため、対応が難しいものに関しては、各省庁や自治体と個別に相談しながら実証実験を検討・実施することになります。

現在、自動運転に係るガイドラインは各省庁から5つ出ています。ティアフォーも各ガイドラインの内容を十分理解・準拠し、また関係各所と事前相談をした上で、日本各地で実証実験を行っています。

 

4. 自動運転の安全に関する国際規格

自動運転車は、まず通常の自動車としてのシステムの安全が確保された上で、自動運転システムについても安全である必要があります。そのため、自動車のサプライヤーが準拠すべきマネジメントシステムから、システムの安全標準規格まで、業界標準レベルでの安全を確保することが必要になってきます。

 

自動車業界で対応している国際規格

  • ISO 9001QMS(Quality Management System)の標準規格。品質を継続的に改善していく仕組み。
  • IEC 61508:システムのリスクを軽減するために使用される電気・電子・プログラマブル電子により安全性を高めるための機能安全規格。
  •  ISO 26262:安全機能を設けることにより、自動車に特化した電子システムに故障が発生した場合でも、ドライバーや乗員・交通参加者等へ危害を及ぼす危険を許容可能なレベルに低減するという機能安全規格。
  • ISO/PAS 21448:Safety of the Intended Functionality。他車の動向や天候など自車で制御できない事象や、自車のシステム故障以外の誤使用や性能限界などを想定して安全性を高めるための規格。
  • ISO/SAE 21434:自動車のサイバーセキュリティに対する国際規格。ハッキングされた場合には自動車の安全にも影響が出るため、体系的に取り組む必要がある。
  • UL 4600:最近発行された、ULというアメリカの認証機関の規格。自動運転システムのベストプラクティス。 

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その他、ISO 22737やISO 3691など、自動車以外に適用される自動運転の新しい標準規格についても、内容を確認し順次対応していくことを検討しています。

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このように、自動運転に関連する標準規格はいくつもあり、ティアフォーのようなスタートアップがこれら全ての国際規格に準拠することはなかなか難しい部分もあります。とはいえ、これらの規格を無視することはもちろんできないため、まずはできる範囲での準拠を目指し、安全を最大限確保できるよう努めています。

 

5. 自動運転の安全に関するドキュメント

安全設計を行う上での業界調査のようなこともしています。

これも挙げればきりがないのですが、安全に近道なし、という信念を持っていろいろな先駆者のドキュメントも参照・分析しています。

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  • SaFAD:Safety First for Automated Driving。自動車OEMやTier1が11社集まって作成した、安全な自動運転を可能にする乗用車の開発、ならびに検証および妥当性確認に向けたフレームワーク。
  • Safety Reports:世界各国の自動運転開発会社が安全に対してそれぞれどのように取り組んでいるのかをまとめた公開資料。センサー構成やアルゴリズム、安全性を高めるためにどのようなことを行っているかなど、ティアフォーの競合でもある各社のお知恵拝借ではないですが、内容を参考にしています。(e.g. WaymoNuroNAVYA)
  • NHTSA/ U.S.DOT:アメリカ運輸局内の自動車や運転者の安全を監視する部署が出している安全に関する様々なドキュメントも参考にしています。(e.g. USDOT Automated Vehicles Activities)
  • NCAP: 新車のアセスメントプログラム。特に予防安全としてのアクティブセーフティのプロトコルを参考にしています。(e.g. Euro NCAP 2025 Roadmap)

 

以上、自動運転の安全に関して参照しているものを列挙してみました。論文やその他ドキュメントもあわせて参照し、安全への取り組みに役立てています。

 

おわりに

冒頭にも書きましたが、ルールを守ることは安全を確保するための必要条件ではありますが、十分条件ではありません。そこで次回以降、安全を確保するためにティアフォーでは実際にどのようなことを行っているのか、もう少し具体的に紹介していきたいと思います。